神戸から奄美へ ― ZAN回航記③

明石海峡を越えて、小豆島へ

神戸出港の日。

愛知の湯川さんと入れ替わるように、 須江キャプテンがやって来た。

回航屋。

メカニック。

そして海の人。

若い頃には、 オーストラリア人と四国沖でヨットトラブルに遭い、 一週間漂流したこともあるという。

けれど本人は、 そんな話をあまりしない。

話題はいつも、 船のことだった。

「そこ見た?」

「オイル見た?」

「今直せるものは今直そう」

そんな言葉ばかりだった。

出港前、 明石海峡の潮を待つ。

瀬戸内海の航海は、 風だけでは進めない。

潮を読む。

時間を読む。

海を読む。

やがて、 ZANは明石海峡大橋の下を通過した。

神戸の街並みが少しずつ遠ざかっていく。

まだこの時は、 豊後水道の故障も、 二度の曳航も、 小深江漁港での三か月も知らない。

ただ目の前には、 瀬戸内海が広がっていた。

最初の目的地は小豆島。

約50海里。

奄美までの802海里から見れば、 ほんの始まりだった。

けれど振り返ると、 この日が本当の出発だったように思う。

ZAN & YONA
風と海と、静けさとともに。

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