TYPHOON DAYS IN AMAMI

青い海だけが、奄美ではない

台風の影響で、奄美大島の東岸はクローズとなりました。

観光写真で見る奄美は、 青い空と穏やかな海です。

けれど、外洋に面した東岸には、 静かな湾内の映像からは想像もつかないほど、 荒れ狂う海の現実があります。

同じ島の同じ日でも、 海は場所によって、まったく違う顔を見せます。

青い奄美も、 灰色の奄美も、 どちらも本当の奄美です。

EAST COAST

荒れ狂う、奄美東岸

台風の影響を受けた奄美大島東岸。

外洋から押し寄せる大きなうねりが、 何重もの白波となって崩れていました。

湾内の穏やかな海からは、 想像もつかないような荒れ方です。

台風の影響で荒れる奄美大島東岸
台風の影響を受け、 白波が幾重にも崩れる奄美大島東岸

海岸から見ているだけでも、 その力の大きさが分かります。

この海へ出るという選択肢はありません。

荒れているから怖いのではありません。

荒れている海を、 穏やかな海と同じように考えることが怖いのです。

海を知るとは、 出る勇気だけではありません。

出ない判断を持つことも、 海を知るということです。

QUIET BAY

その一方で、湾内は静かだった

東岸が大きく荒れている同じ日。

地形に守られた湾内には、 驚くほど静かな場所が残っていました。

海は、少し場所を変えただけで、 別の表情を見せます。

風向き。

島の地形。

岬の位置。

湾の入口。

それらが重なり、 外洋の荒れを遮ってくれることがあります。

同じ奄美、同じ台風、同じ日。
けれど、海況はまったく同じではありません。

その境界を見極めることが、 島で海の仕事を続けるうえで欠かせません。

今日はできるのか。

できるなら、どこでできるのか。

できないなら、迷わずやめる。

海の仕事では、 その判断がすべてです。

DIVE CENTER OKKY

30年来の仲間、OKKYと静かな湾内へ

OKKYは、 ダイビングショップ勤め時代の同僚です。

付き合いは、もう30年ほどになります。

ダイビングショップ時代から、 海を共にしてきた仲間です。

奄美に生まれ育った島人であり、 海の仕事を続けてきた人でもあります。

そして、 三線を作る職人唄を教えるという、 もう一つの顔も持っています。

海と島の文化。

どちらも、 奄美で暮らしてきた時間から生まれたものです。

東岸が荒れるなか、 OKKYはゲストとともに、 地形に守られた静かな湾内へ入りました。

この日の仕事は、 体験シュノーケリングです。

台風の影響を避け、 静かな湾内で行われた体験シュノーケリング

映像だけを見ると、 台風が近づいているとは思えないほど、 海は穏やかです。

けれど、そのすぐ外では、 東岸の海が大きく荒れています。

何が何でも予定どおりに行うのではありません。

その日にできることを見極め、 可能な海を選ぶ。

それも、 島の海を案内する仕事です。

海を知っている者同士だから、 「今日はどこならできるのか」が分かります。

それでも最後は、 自分の目で海を見て判断します。

YONA TROLLING TEST

YONAで、うぶすカツオを追う

一方、私はYONAで、 台風前の湾内トローリングのテスト釣行へ出ました。

狙いは、 奄美で「うぶすカツオ」と呼ばれる魚です。

一般的には、 スマガツオと呼ばれています。

脂があり、 刺身でも焼いても美味しい魚です。

呼び名はいくつかありますが、 美味しさについては、 あまり議論の余地がありません。

台風前の静かな湾内で行った、 うぶすカツオのトローリングテスト

台風前後には、 海の様子が大きく変わることがあります。

風向き。

潮の流れ。

水の色。

ベイトの動き。

鳥の飛び方。

それぞれが、 魚の動きとつながっています。

テスト釣行の目的は、 魚を釣ることだけではありません。

海が今、 どのような状態にあるのかを、 自分の目で確かめることです。

魚はこちらの予定を知りません。

台風が来ることも、 こちらがテスト中であることも、 あまり気にしていないでしょう。

それでも、 海へ出て確かめる価値はあります。

次のツアーで、 どのルートを使うのか。

どの速度で引くのか。

どこまでなら安全に行けるのか。

その判断は、 海の上でしか得られません。

SEA JUDGEMENT

海を見るという仕事

海の仕事は、 予定表どおりに進む仕事ではありません。

予約が入っていても、 海が出るなと言えば出ません。

晴れていても、 風が強ければ中止になります。

雨が降っていても、 海が穏やかなら実施できることがあります。

天気だけでは、 海の安全は判断できません。

風の向き。

風の強さ。

波の周期。

潮の流れ。

地形による影響。

それらを合わせて、 出るか、やめるかを決めます。

海を怖がりすぎる必要はありません。

けれど、 海を軽く考えてはいけません。

自然に逆らわず、 その日の海に合わせる。

それが、 長く海の仕事を続けるための基本です。

ISLAND LIFE

台風が来るということ

台風が近づけば、 海の仕事は止まります。

ウインドサーフィン。

SUP。

船釣り。

サンセットクルーズ。

予定されていた海の仕事は、 すべてキャンセルになります。

船を守り、 道具を片づけ、 ロープを確認します。

飛びそうなものをしまい、 風と波が通り過ぎるのを待ちます。

島で台風を迎えるということは、 何か特別なイベントではありません。

毎年繰り返される、 島の暮らしの一部です。

けれど、 慣れているからといって、 油断してよいわけではありません。

台風は毎回違います。

進路も違う。

風向きも違う。

海の荒れ方も違う。

だから、 毎回あらためて備えます。

ISLAND SUPPLY

止まるのは、海の仕事だけではない

台風が来ると、 止まるのは海の仕事だけではありません。

フェリーや貨物船が欠航すれば、 島へ届く食料品や生活用品も止まります。

今回は、 おそらく5日ほど物流が滞るでしょう。

スーパーの棚から、 牛乳や野菜が減っていきます。

パンがなくなり、 生鮮食品が少なくなり、 いつもある物が姿を消していきます。

島の外から運ばれてくる物が、 どれほど生活を支えているのか。

台風が来るたびに、 あらためて分かります。

島に暮らすということは、 美しい自然のそばで暮らすことです。

同時に、 その自然の都合を受け入れて暮らすことでもあります。

海が荒れれば、 島の時間も止まります。

それは不便です。

けれど、 これも島で暮らすということです。

AMAMI GRAY

奄美グレーも、リアルな奄美

観光パンフレットに載るのは、 青い空と青い海です。

強い日差し。

白い砂浜。

透明な海。

それらは、 たしかに本当の奄美です。

けれど、 それだけが奄美ではありません。

灰色の空。

荒れ狂う外洋。

仕事がキャンセルになる日。

物資が届かない日。

風が過ぎるのを、 ただ待つ日。

それらも、 本当の奄美です。

静かな湾内のすぐ外で、 外洋は大きく荒れています。

一つの映像だけでは、 海のすべては分かりません。

穏やかな場所だけを見れば、 台風の現実は見えません。

荒れた場所だけを見れば、 地形に守られた湾内の静けさは見えません。

どちらも同じ島の海です。

海は毎日違います。

だからこそ、 その日の海を見ます。

無理をせず、 安全な場所を選びます。

青い奄美も、灰色の奄美も、 どちらも本当の奄美。

私たちは、 その両方を「海のリアル」として、 伝えていきたいと思います。

THE REAL OCEAN

自然に逆らわず、自然と付き合う

海は毎日違います。

同じ場所でも、 同じ海は二度とありません。

だから、 海を決めつけません。

出られる日には出る。

出られない日には出ない。

静かな場所があれば、 その海を楽しむ。

それが40年以上、 海に教わってきたことです。

青い海だけではなく、 灰色の海も見る。

釣れた魚だけではなく、 釣れなかった日の海も見る。

海の良いところだけを切り取らず、 その日の海をそのまま受け取る。

それが、 私たちが伝えたい「リアルな奄美」です。

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