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神戸から奄美へ ― ZAN回航記④

泳ぐイノシシと須江キャプテンの故郷

小豆島の朝は早かった。

まだ空気の冷たさが残る時間。

ZANは静かに係留ロープを解き、次の目的地へ向かった。

瀬戸内海は穏やかだった。

須江キャプテンと二人、ゆっくりと西へ進む。

出港して間もない頃だった。

前方の海面に何かが見えた。

最初は流木かと思った。

しかし違った。

泳いでいる。

しかもかなり大きい。

イノシシだった。

しかも立派な雄らしい。

そのイノシシは迷いもなく四国本島の方向へ泳いでいた。

海を渡る獣。

瀬戸内海では珍しい話ではないらしい。

それでも実際に見ると驚く。

無事にたどり着けるだろうか。

そう思いながら見送った。

ZAN回航記 小豆島から瀬戸大橋へ

やがて瀬戸大橋が見えてきた。

巨大な橋脚の下を通過する。

船から見上げる瀬戸大橋は、陸から見る姿とはまったく違う。

橋を越え、荘内半島へ向かう。

この日の目的地は香川県三豊市の宅間漁港。

ここは須江キャプテンの故郷だった。

港の人たちに快く迎えられ、ZANを漁港へ係留させてもらう。

回航の途中でこういう港に出会えることはありがたい。

その夜は須江キャプテンの自宅へ。

個性的で、海の匂いがする住まいだった。

船乗りらしい道具。

機械。

部品。

そして旅の痕跡。

神戸を出てまだ数日。

奄美までは遠い。

けれど今思えば、この頃はまだ旅の入口だった。

豊後水道の故障も。

二度の曳航も。

小深江漁港も。

まだ知らない。

ただ海は穏やかで、泳ぐイノシシと、須江キャプテンの故郷があった。

ZAN & YONA
風と海と、静けさとともに。

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