神戸から奄美へ ― ZAN回航記①
40年選手のヨットとの出会い
2024年10月。
神戸のマリーナで、 これから奄美へ回航するヨットと向き合っていた。
長い間、 静かに係留されていた船だった。
まず始めたのは浄化作業。
船体を点検し、 汚れを落とし、 船底塗料を塗る。
回航の準備は、 船を知る時間でもある。
船底にもぐり、 船体を見上げる。
40年という船齢を考えれば、 驚くほど状態は良かった。
もちろん新品ではない。
長い年月を海で過ごした跡が、 あちこちに残っている。
けれど、 それが逆に安心感でもあった。
初めて全体を見た時の印象は、
「ずんぐりむっくり」
だった。
最近のスマートで細身なヨットとは違う。
舵も短い。
どこか不器用そうな姿だった。
でも不思議と嫌ではなかった。
むしろ、 他のヨットにはない個性を感じた。
この船らしい。
そう思った。
期待していた通りの船だった。
少し安心したのを覚えている。
まだこの時は、
2年後に奄美の海でイルカに囲まれることも、
遊漁船として走ることも、
なす紺のハルになることも知らない。
ただ目の前には、
40年の時間を生きてきた一隻のヨットがいた。
そして私は、
この船で奄美へ向かう準備を始めていた。