第四レグ 伊予から三机へ ― シングルハンドの始まり
伊予港から三机港へ。
須江キャプテン下船後、ZANとの一人旅が始まった。
伊予港。
須江キャプテンが下船した。
いよいよ一人旅の始まり。
ここまでは湯川さんや須江キャプテン、多くの人に助けられてきた。
しかし今日からは違う。
本当の意味で、ZANと二人だけの航海が始まった。
まだ船に受け入れられていない感覚
出港前から漠然とした不安があった。
操船技術だけではない。
まだ船に受け入れられていない。
そんな感覚だった。
長年ヨットに乗っている人ならわかるかもしれない。
船には性格がある。
持ち主が変わると船は駄々をこねる。
大分の回航屋さんに言われた言葉を思い出す。
その意味が少しずつわかり始めていた。
思ったより吹いている
Windyで予報は確認していた。
十分読んだつもりだった。
しかし海へ出ると、思ったより風が強い。
ランニング。
クオーター。
追手からの風は一見楽そうに見える。
だが伊予灘では神経を使う。
ヨットは揺れ、風向きは変化し、波が船尾を押してくる。
一瞬気を抜けばブローチングにつながる。
瀬戸内海は穏やかではない
瀬戸内海は穏やか。
そう思われることが多い。
だが実際は違う。
吹き出せば短く立った風波。
大型船の引き波。
護岸から返ってくる反射波。
潮波。
それらが入り混じり、海面は思った以上に複雑になる。
特に小型ヨットには厳しい。
瀬戸内海は決して優しい海だけではない。
三机到着
夕方、無事に三机港へ到着。
シングルハンド最初のレグを終えたZAN。
伊予港から三机港まで約34海里。
大きなトラブルはなかった。
それでも、疲労感は今までとは違った。
全てを自分で判断し、全てを自分で決める。
シングルハンドの重さを感じる一日だった。
港のご縁
三机では、港の近くに住むちえちゃんと知り合った。
「晩のおかずにどうぞ」
そう言ってサユリをいただいた。
早速その日の夕食になる。
回航では、こうした出会いが本当に嬉しい。
知らない港。
初めて会う人。
そして思いがけない親切。
船旅は、距離だけではなく、人との出会いでできている。
海は一人で渡る。
でも一人では辿り着けない。
そんなことを考えながら、サユリを肴に、三机の夜は静かに更けていった。
To Be Continued…
次回
豊後水道へ。
そして別府湾。
Fluctuat nec mergitur
波に揺られど、沈まず。
ZAN & YONA
風と海と、静けさとともに。