第三レグ 宅間から伊予へ ― 須江キャプテン下船、そして一人旅の始まり

宅間漁港出港

2024年11月。

宅間漁港を出港したのは午前3時頃。まだ夜が明ける前だった。

今回の目的は単なる移動ではない。瀬戸内海の夜間航行訓練でもあった。

須江キャプテンの計らいで、ZANは静かな闇の海へ滑り出した。

潮が支配する瀬戸内海

瀬戸内海は風だけではない。潮が支配する海だ。

追い潮なら6ノットを超え、逆潮なら3ノット台まで落ちる。

子供の自転車の方が速いこともある。

だから瀬戸内海では、エンジンや帆よりも、潮を読むことが重要になる。

ZAN回航記 航路図

宅間漁港から堀江港まで約54マイル。
来島海峡を避け、船折瀬戸を通過。

来島海峡ではなく船折瀬戸へ

瀬戸内海最大級の難所、来島海峡。

大型船が行き交い、潮流は激しく変化する。

須江キャプテンは無理をしない。

潮を読み、タイミングを待ち、船折瀬戸を選択した。

回航とは最短距離を走ることではない。

最も安全な航路を選び続けることだ。

その後も潮に押され、潮に止められながら、ZANは西へ向かった。

平均艇速は約5.5ノット。

29フィートのフィンランド生まれのヨットとしては、よく走ってくれた。

堀江港

堀江港で一泊

この日の目的地は松山市の堀江港。

約54マイル。

潮と付き合いながらの長い一日だった。

無事に係留できた時の安心感は大きかった。

伊予港へ移動

翌日、オルタネーター受け取りのため伊予港へ移動。

距離は約10マイル。

調子の出ない発電系統。

ここで須江キャプテンと共にオルタネーター交換を行った。

長距離回航では、今直せるものは今直す。

須江キャプテンが何度も言っていた言葉だ。

いよいよ一人旅

交換作業は無事終了。

そしてここで須江キャプテンは下船した。

愛知では湯川さん。

四国では須江キャプテン。

ここまで多くの人に助けられてきた。

だがこれから先は違う。

伊予港で天候待ちをしながら、静かに揺れるZANを見ていた。

ここから先は、本当の意味で自分自身の航海になる。

回航とは何が何でも船を持って帰ること。
家族に船を見せること。

― 須江キャプテン

その言葉が、伊予港の夜に何度も頭の中で響いていた。


To Be Continued…

次回
伊予港から豊後水道へ。
そして小深江漁港。
米田さんとの出会いが待っていた。

ZAN The Sea Goddess of Amami

Fluctuat nec mergitur.

The Sea Goddess of Amami

波に揺られど、沈まず。

ZAN & YONA
風と海と、静けさとともに。